菜の花幼稚園では発表会で『赤頭巾ちゃん』をやることになってい
た。
しかし、そのキャスティングについて先生たちの間で話し合いが行
なわれていた。
前回の『桃太郎』では、全員が桃太郎で、鬼は先生たちでやるとい
うとんでもないものになってしまっていた。犬も猿もキジも登場し
ないありえない『桃太郎』だった。
親の圧力に負けた結果、納得のいかないものになっていた。しかし
、親は大喜びという頭を抱える出来事だった。先生たちは真剣に発
表会をやる意味について考えたりもした。
今回も実はやらない方向で進んでいた。しかし、何人かの親から要
求があり開催することとなったのだった。
そして作品は『赤頭巾ちゃん』に決定とした。
「どうせ全員赤頭巾やらせることになるんだろう」
高木仁史が口火を切った。誰もが思っていたことだが、なかなかか
言い出せなかったのだ。
「男の子も赤頭巾ちゃんをやるの」
新野朋美が聞いた。
「男の子は猟師さんでいいんじゃない」
そういったのは一番年上の水野洋子だった。
「でも、主役じゃないでしょ。どっちかというとおおかみの方が主
役っぽくないですか」
新人の市川明日実が口を挟んだ。
「おおかみか・・・」
高木がため息をついた。
「どうしたの高木君」
水野は意味ありげにため息を付いた高木に聞いた。
「いえ、なんでもないです」
人は言いかけてやめられると気になるもので、他のみんなも知りた
いという欲求が膨れ上がってきていた。
別に興味を持っていなかったものにもそれは伝染していた。
「高木さん、気持ち悪いから話してください」
市川の言葉で高木は話すことにした。
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